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高ストレス者率が高い組織と低い組織で回答分布に差がある尺度

高ストレス者率から定義する良好組織と不良組織

ストレスチェック研究所では2019年度ストレスチェック有効受検者199,290人、575組織のデータをもとに、高ストレス者率という観点から下記のように良好組織と不良組織を定義しました。

良好組織:高ストレス者率8%未満の組織
不良組織:高ストレス者率23%以上の組織

良好組織に該当した組織は58組織、不良組織に該当した組織は65組織であり、それぞれ全受検組織の10%程度です。
高ストレス者率において、およそ上位10%、下位10%の組織であるとお考えください。
今回のレポートでは、良好組織と不良組織におけるストレスチェック受検者の各尺度の回答分布を比較し、どの尺度に大きく回答の差が生じているのかを明らかにするとともに、その差から良好組織を目指すために求められる取り組みについて考えていきます。

良好職場と不良職場の比較

総合健康リスクの比較

各尺度の回答分布の前に、まずは総合健康リスクを比較してみましょう。
総合健康リスクとは、仕事のストレス要因から予想される疾病休業などの健康問題が従業員に生じるリスクが全国平均よりも何%程度大きいかを示した一般的な指標であり、全尺度の中から「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」の4尺度をもとに算出されています。
全国平均値が100であり、たとえば総合健康リスクが120の組織の場合ですと、健康問題が起きるリスクが全国一般と比較して20%大きいと判断します。
この総合健康リスクにおける良好職場と不良職場との差を図1に示しました。

(図1)良好職場と不良職場の総合健康リスクの差

結果として、良好職場の方が不良職場よりも総合健康リスクが低いことが明らかになりました。
定義通りではありますが、やはり総合健康リスクが低い方がストレスを抱えている者が少ない、つまり高ストレス者率が低いとわかります。

回答分布の差が大きかった尺度

それでは次に、各尺度の回答分布をみていきます。
すべての尺度の中で、良好職場で働いている人、不良職場で働いている人の尺度点数の分布と、それぞれの平均点を比較し、その中から良好職場と不良職場との分布の差が目視で確認できる尺度のみを抽出し、図2に示しました。
各尺度の分布図は、左へいくほど良好、右へいくほど不良となっています。

(図2)良好職場と不良職場の回答分布の差が大きい尺度一覧


結果として以下の尺度において差が大きいということが明らかになりました。

「仕事の満足度」
「ワーク・エンゲイジメント」
「ワークセルフバランス(ポジティブ)」
「働きがい」
「職場の対人関係」
「職場環境」
「上司の公正な態度」
「個人の尊重」
「経営層との信頼関係」

業務そのものに関する尺度ではなく、職場の環境や対人関係に関する尺度で差が生まれているようです。
これらの尺度が不良で高ストレス者率が高い組織は、改善することで良好組織へと近付く可能性があります。

差が大きかった尺度の改善方法

① 直接的ではなく間接的に改善していくべき尺度

良好職場と不良職場で回答分布の差が大きかった尺度のうち「仕事の満足度」「ワーク・エンゲイジメント」「ワークセルフバランス(ポジティブ)」は一般的に相関の生じやすい項目です。
仕事に満足感と誇りを持ち、いきいきと働き、仕事のおかげで自分の生活が充実している状態であれば、仕事によるストレスも生じづらいと考えることができます。
これらの尺度を直接的に改善することは困難であり、他の尺度を改善した結果、間接的に改善される尺度であるといえますので、この状態を目指そうという目標として捉えましょう。
ワーク・エンゲイジメントとその他の尺度との相関については下記のレポートもご参照ください。

② 疾病や労災発生のリスクが高まる尺度

放置するとただちに危険が及ぶものとして「職場環境」があります。
これは騒音、照明、温度、換気などの物理的な職場環境を指していますが、放置することで精神的ストレスのみならず、さまざまな身体的疾病を引き起こし、労災につながる危険性があります。
業務内容や職場によるとは思いますが、大がかりな工事をしなくても工夫できる余地はありますので、後回しにせず、従業員への聞きとり調査や、職場巡視の際に産業医からもらう意見を参考に、改善していくことがおすすめです。

③ 人間関係に関する尺度

「職場の対人関係」「上司の公正な態度」「個人の尊重」「経営層との信頼関係」は組織の中の人間関係に関わる尺度です。
お互いの価値観を大事にすることのない、ぎすぎすとした雰囲気の中、不誠実な上司と信頼できない経営層のもとで働くことは、確かにストレスになりそうです。
「職場の対人関係」は「私の部署内で意見のくい違いがある」「私の部署と他の部署とはうまが合わない」「私の職場の雰囲気は友好的である」という3つの質問から成り立つ尺度です。
部署内で意見の食い違いがあることは、ひとりひとりが自分の意見をきちんと持っているということなので決して悪いことではありませんが、それを食い違いではなく、建設的かつ友好的な意見交換の場に変えられるように、定期的なミーティングの機会と意見交換時のルール(マナー)を設けるとよいでしょう。
こういった取り組みにより互いの価値観を理解しあうことができれば「個人の尊重性」の改善にもつながります。
「上司は誠実な態度で対応してくれる」という質問から成り立つ「上司の公正な態度」についてですが、誠実な態度とはどのような態度でしょうか。
自分の気分や相手が誰であるかによって態度や評価を変えないこと、独断でころころと方針転換をしないこと、自分の保身のために部下を利用しないこと、人格否定などのハラスメント行為をしないことなどが挙げられます。
この尺度が不良となっている場合には、上司である管理監督者に部下との接し方を教育することもよいですが、360度評価制度を取り入れるなど管理監督者の人事評価基準から見直すことが有効と考えられます。
「経営層との信頼関係」も同様です。
従業員に対して公正かつ誠実であること、従業員の安全や健康、ワークライフバランスを守るための取り組みや、多様性を認める姿勢、経営方針や従業員に影響のある変化に関する情報を末端の従業員にまで遅滞なくきちんと伝えることなどが求められるのではないでしょうか。

④ 注目したい「働きがい」という尺度

最後に注目したいのが「働きがい」です。
働きがいを感じていれば多少忙しくても、困難な仕事であったとしても、前向きに取り組むことができると考えられます。
では、「働きがい」をどのように高めていけばいいでしょうか。
仕事をしていてどんなときに「働きがい」を感じるかと問われると、おそらく多くの方が「組織の中で自分が昇進すること」や「多くの賃金を得ること」ではなく「自分の仕事が世の人々の役に立ち、社会的意義があると実感できたとき」と感じるのではないでしょうか。
業種にもよりますが、目の前の自分の仕事が「誰かの役に立っている」「社会的意義が大きい」という実感を得ながら働くことは難しいかもしれません。
しかし、自分の仕事の社会的意義を心にとどめて働くことはできます。

経営学者ピーター・ドラッカーは3人の石切り工の昔話を著書内で紹介しています。
同じ仕事をしている3人に何をしているかを聞いたとき、第一の男は、「これで暮らしを立てているのさ」と答え、第二の男は「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしているのさ」と答え、第三の男はその目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら「大寺院をつくっているのさ」と答えたという有名な話です。
誰が最も働きがいを感じることができているかは明白ですね。
自分自身で意識するだけでなく、組織内、チーム内で自分たちの仕事の社会的意義について考えて共有する場を設けることや、部下、後輩、新人に仕事を教えるときに、作業内容そのものよりも、目指すゴールや社会的意義を伝えることに重きを置くとよいでしょう。
ただし、注意していただきたいこととして、人間はやりがいを感じているときに疲労感を感じづらく、それに伴いストレス反応もあらわれづらくなり、自分が疲れていることに気付けない「隠れ疲労」状態に陥りがちです。
たとえば、働きがいがあり、やる気に満ちているからと睡眠時間を削って休みなく働いた場合、「疲れた」という感覚はなくても確実に疲労は蓄積しており、そのまま睡眠や休養不足状態を継続すると過労死に繋がりかねません。
「働きがい」を生み出すと同時に、残業時間や休日出勤を減らす取り組み、疲労に関するセルフケア教育が求められるでしょう。
高ストレス者率を減らし、良好組織を目指すために、お役立てください。

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