
ストレスチェックとともに過労死を考えてみよう
最終更新日 2023-01-10
毎年11月は「過労死等防止啓発月間」です。
これは「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施しています。
ところで過労死とはどのようなものでしょうか。
遠い他人事のように感じるものか、それともいつか自分や自分の大切な人にふりかかる身近なものでしょうか。
このコラムをきっかけに、自分や自分の大切な人のために過労死について知り、働き方を振り返る機会にしていただければ嬉しいです。
目次
過労死の定義 ‶死亡しない″ケースも含まれる
過労死という言葉を知っている人は多いでしょうが、その定義まで正しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
過労死とは以下のように定義されています。
〔過労死の定義〕
・ 業務における過重な負荷による死亡(脳血管疾患、心臓疾患を原因とする)
・ 業務における強い心理的負荷による自殺(精神障害を原因とする)
・ 業務における疾患や障害(脳血管疾患、心臓疾患、精神障害)
業務負担による死亡はもちろん、自殺や死亡に至らない病気や障害も含まれることが特徴です。
どんな状況で過労死が起こる?
過労死を招きやすい主な要因として、以下が挙げられます。
・ 長時間労働(目安として月45時間以上)
・ 強い不安、悩み等のメンタル不調
・ 睡眠不足
・ ハラスメント
わが国の労働者1人当たりの年間総実労働時間は緩やかに減少傾向にあり、8年連続で減少しています。
しかしながら、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、最新データでは54.2%であり、依然として半数を超える状態が続いています。
その内容は、厚生労働省「令和3年版過労死等防止対策白書」によると、「仕事の量・質」が最も多く(56.7%)、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」(35.0%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(27.0%)です。

「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」とした労働者のうち、その内容(令和2年)
出所:厚生労働省「令和3年版過労死等防止対策白書」
過労死の要因となる長時間労働を是正しワーク・ライフ・バランスを図るとともに、メンタル面においても良好な職場環境を築いていくことが重要です。
相談先があることがポイント
では、企業として過労死を起こさないためには具体的にどのようなことをすべきで、どのようなことができるでしょうか。
過労死を起こさないための対策としては、以下が挙げられます。
・ 労働条件の適性化
・ 過重労働対策
・ ワーク・ライフ・バランスの向上
・ 相談先の整備 (特に外部窓相談口の明確化)
・ 職場環境(特にコミュニケーション)の見直し
・ ストレスチェック集団分析による傾向の把握
組織単位で制度を作るとともに、実際にその制度を利用できるしくみや風土があること、またチーム単位でも認識を統一していくことが大切です。
なかでもメンタルヘルス不調や自殺という大事に至ることを防ぐには、「相談先があること」がポイントです。
なぜなら、人間は悩みを抱えている状態で冷静な思考を持つことは難しく、正常な判断ができないものだからです。
アウトプットすることで初めて得られる考え方や思考・状況の整理が適う効果があります。
では、もし自分が困ったとき「この人なら話せる」という人が何人思い浮かびますか?
労働者が挙げた相談相手は以下です。

「相談できる人がいる」とした労働者のうち労働者が挙げた相談相手(令和2年)
出所:厚生労働省「令和3年版過労死等防止対策白書」
このデータによると、相談相手は必ずしも職場の人でなくとも構わないものの、上司・同僚といった日頃業務をともにしているチームメンバーがいかに大きな役割を担っているかがわかりますね。
内容によっては、産業医・保健師・カウンセラー等の専門家が有用な場合もあるため、職場としてはいくつか相談先の選択肢を用意し、明確にアナウンスしておくことが求められます。
過労死を防ぐためにストレスチェックの集団分析が有効
過労死対策の一つとして重要なのがメンタルヘルスケアです。
仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスは個人だけの問題ではありません。
ストレスチェックの集団分析を実施することで、ストレス要因や緩衝要因の程度、業務負荷の傾向、人間関係等のリスクを知ることができます。
集団分析結果の活用により、過労死等のリスクを一定数減らしていくことにつながります。
まとめ
「しごとより、いのち」
仕事が原因で命をなくすことがあってはなりません。
「過労死等防止啓発月間」をきっかけに、自分や自分の大切な人の働き方について考えてみませんか。
従来、企業が抱える課題の分析は、経営層による‶勘や経験則″によるものがほとんどでした。
しかし、集団分析から得た結果は、これまでの精度の低い情報ではなく、組織の資源として資産化することが可能になりました。
このように集団分析の活用は、これまで組織内に散らばっていた情報を集約して、各チームの問題点や改善策を導き出す手段になるでしょう。
ドクタートラストでは、健康にいきいき働く人を増やすことを目標に、ストレスチェックサービスの実施をはじめ、さまざまな健康管理サービスを展開しております。
産業医、保健師、カウンセラーの導入をはじめ、職場環境改善のための研修・セミナーも行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
<参考>
厚生労働省「令和3年版過労死等防止対策白書」
警察庁「自殺者数」
執筆者

- 【保有資格】保健師/看護師/第一種衛生管理者/人間ドック健診情報管理指導士
【コメント】行政保健師として住民の方々の健康のサポートをしたのち、働く人々の健康づくりをサポートをしたいと考え、現在産業保健領域で活動しています。ストレスチェックの分析やセミナーなどを通して、働く皆さんが、体も心もいきいきと過ごせるよう、そして、楽しく安心して働ける職場を増やすことにつながるよう、情報をお伝えしていきます。
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