
心理的安全性とは?そのメリットや高める方法
最終更新日 2023-03-10
2015年に、Googleが「チームの生産性・パフォーマンスを高める最大の要因は心理的安全性である」と発表したことで、近年「心理的安全性」という言葉が注目を集めています。
この記事では、心理的安全性とはなにか、そのメリットや心理的安全性を高める方法についてお伝えします。
目次
心理的安全性とは?
心理的安全性(phychological safety)とは、組織やチームの中で、自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のことです。
1999年にエイミー・エドモンドソンにより提唱された心理的安全性は以下のように定義づけられています。
対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え
つまり、心理的安全性とは「組織やチームの中で、対人リスクを恐れずに自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態」を示しています。
例えば、会議やミーティングで、チームメンバーにどう思われるかを気にしてしまい自分の考えを発言できない状態は、心理的安全性が低いと言えるでしょう。
心理的安全性が注目されている背景について
心理的安全性が注目されるようになった契機は、前述したGoogle社の調査発表です。
Google社が2012年から約4年かけて行った社内調査の結果、効率的で成果を上げられるチームの条件は、「優秀なメンバーがいるか」ではなく、「メンバー同士がいかに協力し合うか」にあるとわかり、この調査結果が発表されると大きな話題となりました。
また、心理的安全性が注目を集める要因として、新型コロナウイルス感染症の拡大によるテレワークの普及など、職場環境の変化も考えられます。
心理的安全性がもたらすメリット
それでは、心理的安全性が高い組織では、どのようなメリットがあるのでしょうか。
チームにもたらすメリット
心理的安全性が高くなれば、チーム内での情報共有がスムーズになり、メンバーが新たなアイディアを積極的に出すようになります。
また、心理的安全性によって失敗を恐れずチャレンジできるため、創造性豊かなチームとなるでしょう。
心理的安全性が高いということは、企業に尊重や尊敬、助け合いの風土があると言えます。
企業やチームがダイバーシティ化する中で、そのような風土があれば、コミュニケーションも活発になり、メンタルヘルス不調も発生しにくくなるでしょう。
企業・組織にもたらすメリット
心理的安全性が高い職場では、自分の技能や知識を活かして働くことができるため、社員のワーク・エンゲイジメント向上にもつながるでしょう。
そして、ワーク・エンゲイジメントが向上すれば、企業へ人材が定着し、離職率も低下していきます。
人材不足が課題となる日本では、とても大きなメリットです。
また、心理的安全性の高い職場では「他者に対して自分の考えを伝えることができる」「違和感に対して指摘することができる」ため、不正や不祥事などのリスク回避にもつながるでしょう。
心理的安全性を高める方法とは
では、心理的安全性を高めていくためには、どうすれば良いのでしょうか。
まずは、心理的安全性の状況を把握する
まずは、自分の組織やチームがどのような状況かの確認から始めましょう。
エイミー・エドモンドソンは、心理的安全性を測定する指標として、7つの質問を挙げています。この7つの指標の点数が良好なほど、心理的安全性が高いと評価することができます。
(1)このチームでミスを犯したら、たいていの場合、責められる
(2)このチームのメンバーは、問題のある事柄や困難な事案でも言い出すことができる
(3)このチームでは、メンバーが「自分とは違う」ことを理由に他者を拒否することがある
(4)このチームでは、リスクをとることについて心配することはない
(5)このチームでは他のメンバーに助けを求めることは難しい
(6)このチームの誰であろうと、故意に私の努力を妨害するような行為はしない
(7)このチームのメンバーと一緒に働くことで、私ならではのスキルや能力が価値を持ったり、役に立ったりしている
挨拶や声がけで話しかけやすい雰囲気をつくる
では、心理的安全性の状況が確認できたら、何から取り組めば良いのでしょうか。
おすすめは、「話しやすさ」の状況から改善することです。
やはり、話しやすさが保たれているからこそ、助け合いや挑戦、互いに尊重・尊敬できる風土が醸成されます。
エドモンドソンは、心理的安全性がある職場では、ポジティブな発言が多く、日頃から成功だけでなくミスや問題についても話をしており、職場に笑いとユーモアがあると述べています。
しかし、いきなり笑いやユーモアを作り出すのは難易度が高いので、まずは明るい挨拶や小まめな声がけから始めてみましょう。
「たかが挨拶、されど挨拶」です。
疲れた声や嫌な表情をして、顔を合わせずに挨拶をしていないでしょうか。
そんな職場は安心して働ける環境とは言えません。
まずは、管理職から明るい挨拶と小まめな声掛けを行い、心理的安全性のある職場づくりを目指しましょう。
また、相手が大切にしている価値観や信念などが理解できれば、互いに助け合えるような風土も生まれます。
一人ひとりの背景が知れるような雑談や1on1の機会をつくり、相手との共通点などを確認しあうことも重要です。
お互いに感謝をしあう仕組みづくり
お互いに感謝しあえることも重要です。
近年多くの企業で取り組まれていますが、感謝カード(サンクスカード)は、コミュニケーションを活性化し、心理的安全性を高めるひとつの方法です。
「承認されている」「感謝されている」という認識が、チームの一体感を促します。
また、「承認されている」という土台があれば、上司などからの指導や注意であっても、必要以上に不安になることもないため、心理的安全性の高いチームの構築につながります。
質問や相談できる環境づくり
「ミーティングや打ち合わせでは一言も話さない」、そんなメンバーにも発言をしてもらえるような工夫を行うことも大切です。
心理的安全性が低い段階では、「本当にこの意見を言っていいのか」「間違っていたらどうしよう」という不安から、その場で自分の考えを話すことに対してためらいを感じてしまいます。
この場合には、「話し合いたい目的」や「意見を求めたいこと」について事前に共有する方法が効果的です。
また、ミーティング中は、全員に意見を聴くようなファシリテーションを行うことで、安心して質問や相談ができる環境が形成されていくでしょう。
まとめ
今回は、心理的安全性とは何か、そのメリットや高める方法についてお伝えしました。
心理的安全性は一朝一夕で高まるものではありません。
まずは、職場の心理的安全性の状況の把握からはじめ、話しやすい環境づくりや尊重しあえるようなチームづくりをコツコツと行っていきましょう。
ドクタートラストでは、ストレスチェック結果をもとに、職場環境改善コンサルティングサービスも提供しています。
「心理的安全性を高めたい」などのお悩みは、ぜひドクタートラストへご相談ください。
<参考>
青島未佳(著)、山口裕幸(監修)『リーダーのための心理的安全性ガイドブック』(労務行政、2021年)
山口裕幸「組織の『心理的安全性』構築への道筋」
Google re:Work「『効果的なチームとは何か』を知る」
執筆者

- 【保有資格】保健師/看護師/第一種衛生管理者/人間ドック健診情報管理指導士
【コメント】行政保健師として住民の方々の健康のサポートをしたのち、働く人々の健康づくりをサポートをしたいと考え、現在産業保健領域で活動しています。ストレスチェックの分析やセミナーなどを通して、働く皆さんが、体も心もいきいきと過ごせるよう、そして、楽しく安心して働ける職場を増やすことにつながるよう、情報をお伝えしていきます。
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